Artist

星野 源 [JP]

report

メイン・ステージ向かって左側のアコースティック・ステージ、スポットライトのみが照らされる舞台の上に、星野源が1人で静かに登場。“歌を歌うときは”の《歌を歌うときは 背筋を伸ばすのよ 想い伝えるには 真面目にやるのよ》と切々と歌い上げるその豊潤な歌声が、『NANO-MUGEN』2日目・横浜アリーナの空間に凛とした風を吹かせていく。「どうも星野源です! よろしくお願いします!」と、続く“キッチン”のアルペジオを奏でながらゆるやかに空気をスウィングさせ、“ばらばら”では《世界はひとつじゃない》と、真実を厳然と、そして優しく、「今、ここ」へと解き放っていく。砂の中のダイヤモンドのように世の中に点在する「本当に大切なこと」の在り処を、アコースティック・ギターの調べと珠玉のメロディに乗せて1つ1つ静かに、しかし確実に指し示していくような彼の歌に、オーディエンスはすっかり魅せられている。「いつも、柚子茶を飲みながらやってるんですよ。あったかい、溶かすやつ。今日も飲もうと思って溶かしてみたら、腐ってました!(笑)」とか「(『NANO-MUGEN』には)何年も前から誘っていただいてたんですが、ライブの予定とか、ドラマの撮影の予定とか……『ゲゲゲの女房』の最後、海苔をとりに海に行って死んでしまうという役で(笑)」とか笑いを誘いつつ、アルバム『ばかのうた』から“くせのうた”へ。「昔から僕の歌は『死にたくなるね』って言われるんですけど……わりと褒め言葉として受け取ってるんですけど。最近、いろんなことがあるじゃないですか? ほんといつ死ぬかわかんないから、ちょっとでもね、死を意識する……メメント・モリって言葉もありますけど、『死を想え』って。だから、いいことなんじゃないかなって、思うようにしてるんですけど(笑)。ライブだと、おじさんが『ラララー』って歌いながら号泣してたりするんですけど(笑)。今回もね、弾き語りは僕だけっていう。逆にロックなんじゃないか?って(笑)」……“ひらめき”“老夫婦”、そして最後の“くだらないの中に”まで7曲。その歌でアリーナを柔らかに、しかし確かに掌握してみせていた。

■7月17日
  • 01. 歌を歌うときは
  • 02. キッチン
  • 03. ばらばら
  • 04. くせのうた
  • 05. ひらめき
  • 06. 老夫婦
  • 07. くだらないの中に
文/高橋智樹 | 写真/TEPPEI