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SUEDE [UK]
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ステージに登場するやいなや、大きく手を広げてクラップを求めているのは、紛れもなくあのブレット・アンダーソン! SUEDEが横浜アリーナに、『NANO-MUGEN』のステージに立っている。ブレットが“Introducing The Band”を歌っている。力強いリズムに合わせてアグレッシブに身体をくねらせながら、“She”を艶やかに歌い上げている。バーナード・バトラーの姿こそないものの、2010年の奇跡の再始動以降、再び世界を陶酔させてきたSUEDEが、今この場所に立っているーーという感激に浸る間もなく、“Trash”投下である。2度目のサビでマイクをフロアに向け、オーディエンスに歌を委ね、ムービー撮影のカメラに迫ってヴィジョンにドアップで映し出されるブレット。ブリットポップ以前の80年代末から現在に至るまでのUKロックの歴史を体現するSUEDEの音が、サービス精神の塊のようなアクトと一緒になって、今目の前にある。それだけでもう、最高だ。
息つく間もなく“Filmstar”“Animal Nitrate”と黄金のミドル・テンポの楽曲を畳み掛けていくブレット、リチャードら5人。シャツを汗で濡らしながら「Sing it!」と叫ぶブレットの声に、フロアの温度も上がる一方だ。華やかで艶やかなメロディと佇まいの裏側に、拭いようのない背徳の薫りをまといながら、その歌とサウンドが何よりロック・フェスの祝祭感をも同時に立ち昇らせていく。“Killing Of A Flash Boy”までノンストップで披露したところで、「グッド・イブニング、ヨコハマ! How are you doing?」と笑顔で呼びかけるブレットに、フロアから感極まったような歓声が巻き起こる。“Saturday Night”でアリーナ丸ごとハンドウェーブへと導き、「アリガトーウ!」と快活に叫び、“The Drowners”では勢いよくマイクを回してみせるブレット。時に鋭くコードを刻み、時に妖しくも美しいアルペジオでブレットの歌と絡み合い、伸びやかなソロ・プレイを広大な空間へと解き放っていくリチャード。タテノリのビートに高らかなクラップが湧き起こる“Can't Get Enough”。シンセ・ストリングスの特徴的なイントロのフレーズに導かれて始まったメランコリックな名曲“Everything Will Flow”。“So Young”のブルージーな風景。ロック・オーケストラと呼びたいくらいの“Metal Mickey”の壮麗な音世界……長年SUEDEの音楽に親しんできたファンのみならず、それこそ今日初めてSUEDEの音に触れたであろうオーディエンスも巻き込みながら、ぐいぐいとクライマックスへ昇り詰めていく。“New Generation”のサビで大きなシンガロングの輪を描き出し、ラストの“Beautiful Ones”ではなんとブレットがステージを駆け下りてスタンディング・エリアに駆け寄ってみせる。終わりの近づいた2日間の祝祭を、その音で最高に力強く輝かせてくれた。

■7月16日

  • 01.Introducing The Band
  • 02.She
  • 03.Trash
  • 04.Filmstar
  • 05.Animal Nitrate
  • 06.Killing Of A Flash Boy
  • 07.Saturday Night
  • 08.The Drowners
  • 09.Can't Get Enough
  • 10.Everything Will Flow
  • 11.So Young
  • 12.Metal Mickey
  • 13.The Wild Ones
  • 14.New Generation
  • 15.Beautiful Ones
文/高橋智樹 | 写真/TEPPEI、古溪一道