report

ASIAN KUNG-FU GENERATION[JP]
report

1日目の最後を飾るASIAN KUNG-FU GENERATIONのステージ。真っ白な照明に照らし出された横浜アリーナに、“夜のコール”が力強く響き渡る。会場一丸の多幸感を、そのまま“All right part2”へと直結して、でっかい歓喜の渦を巻き起こしていく。この日の数々の名演に触発されたのか、演奏も歌も絶好調! 特にゴッチ。メロディのアップダウンを全身で楽しみながら歌うゴッチの姿それ自体が、観ている僕らにとんでもないエネルギーを与えてくれるものだ。「今日はすごく雰囲気がよくて。ありがとうございます!」とオーディエンスに語りかけながら、“迷子犬と雨のビート”、熱いクラップに包まれた“君の街まで”、さらに“ループ&ループ”! “リライト”! と間髪入れず楽曲を連射していく。
「さっきFEEDERのタカさんのMCでも感激したんですけど……いろんなジャンルの壁がなくなったらいいなと思って続けてきたんで。すごく、嬉しいです」とゴッチ。「毎年どんどんあったかくなっていって、嬉しいです。いろいろあるけど、この2日間だけは音楽のことだけを考えて、来週に向けてエネルギーを蓄えていってください!」。そして披露された、新曲“それでは、また明日”。シリアスでハード・エッジな音像と強烈なドライブ感を持つビートが、ぎりぎりとせめぎ合いながら新しい明日をこじ開けていくような、アグレッシブな名曲だ。《資本主義の火葬場 呪文のように「安心だ」って》と原発問題に明確にNOを突きつける“N2”。コンピ盤に収録された新曲“夜を越えて”が提示する、無力感の「その先」への力強い一歩……「時代と向き合い時代に作用するロック・バンド=アジカン」が最も鮮烈に鳴り響いた瞬間だった。そこに初期の名曲“エントランス”が加わり、アジカンの世界が立体的なスケール感をもって広がっていく。
「ありがとうございます。ほんとにほんとに嬉しいです」。ここにきてようやく、ゴッチの顔にホッとしたような色が広がり、「さすがに……建さん、そのTシャツないんじゃないの? スタッフTシャツでしょ?」と喜多いじりが始まる。“センスレス”からライブは終盤へ。でっかいシンガロングとクラップを巻き起こした“アンダースタンド”“君という花”。最後の曲は“マーチングバンド”。キヨシ&山田のタイトなロックのビートが、ゴッチ&喜多の刻むギターが、この空間の強靭な鼓動となっていく。最高に幸福な時間だった。
アンコールを求める鳴り止まない拍手の中、再び4人が舞台へ登場。「いろんな場所で交流して、音楽好きな人が広がっていってほしいですよね。こうやって音楽好きな人が集まってくれてる限りは、いい音楽は生まれていくんだろうと思うし。いい音楽が鳴ってる社会は、豊かな社会だと思うんですよ」。多数のダンサーとともに力の限りに喜びを放射してみせた“踵で愛を打ち鳴らせ”。そして、ひときわ壮大に響き渡った、“ワールド ワールド ワールド”から“新しい世界”の流れ……誰もが知っているアジカンの、誰も見たことないくらいに頼もしく逞しい姿がそこにあった。

2日目は大きく趣を変えて“サイレン”のシリアスなアンサンブルからスタート。そこから“マジックディスク”のスリリングなビートへと流れ込む! 『NANO-MUGEN FES. 2012』最後のアクトを1音も残さず全身で楽しみ切ろうと、オーディエンスもありったけのシンガロングと歓声をステージへと送っていく。「最後まで楽しんでいってください!」というゴッチのコールを挟んで演奏するのは“ソラニン”! ひときわタイトなこの日の演奏の力によって、センチメンタルな“ソラニン”の世界が鮮烈に、ダイナミックに展開されていく。1人1人の「NANO」とロックの「MUGEN」をつなぐこのフェスそのもののような“君の街まで”の雄大なサウンド。バンドとオーディエンスの間でのエネルギーの循環から「今」を生き抜くダイナミズムを導き出すような“ループ&ループ”の多幸感。聴く者すべての衝動の在り処にダイレクトに突き刺さってさらに大きなシンガロングを巻き起こす“リライト”。最高のアクトだ。新曲“それでは、また明日”から“N2”、《音楽はあまりに無力だなんて常套句に酔ってても 世界を1ミリでも動かすことは出来るだろうか》と真っ向勝負で歌い上げる“夜を越えて”、格段にパワフルになったサウンドとともに《挫ける前の君の理想を 溶け出す前を知るんだ…》と歌う“エントランス”……といった本編中盤の流れにも、「今」のメッセージがぎっちり凝縮されていた。
「良くも悪くも、インターネットの登場で、細かい趣味も共有できるようになって。でも、情報が交流しなくなったって感じてて。こういうイベントでそれが改善されていくのかなって思ってたけど、2010年ぐらいからワーッと細分化されていく感じがあって。でも、去年ぐらいから、人と交流するのって、身体で感じないとダメだなあって。今、すごくいいライブやってると思ってるけど、このライブをDVDにしても、このよさは伝わらないなあって」とゴッチが語る。「自分が死ぬってことを何も考えてこなかったわけじゃないけど、『俺、いつか死ぬんだなあ』って。今35歳なんだけど、『折り返したなあ』っていう感じがあって。だからこそ、一瞬でも『いいなあ』っていう感じを共有できることを、ありがたく思います」……真っ白な照明以上に目映く胸を照らした“惑星”のポジティビティ。その高揚感を“アンダースタンド”“君という花”の巨大な一体感へと編み上げ、“マーチングバンド”で堂々と本編を締め括ってみせた。
アンコールを求める声に応えて、アジカンの4人……と、チャットモンチー・橋本絵莉子が登場! “All right part2”をゴッチ&絵莉子のツイン・ヴォーカルで披露した後、「1日通して、『俺、音楽好きだなあ』って改めて思いました」としみじみ話すゴッチに、ひときわ熱い拍手が広がる。カラフルなコーラスとダンサーのパフォーマンスが、『NANO-MUGEN FES. 2012』のフィナーレにカラフルな色を添える“踵で愛を打ち鳴らせ”。そしてーー「また会いましょう!」のゴッチの言葉から流れ込んだ正真正銘のラスト・ナンバーは“転がる岩、君に朝が降る”。楽曲越しにリスナー1人1人に寄り添いながらロック最前線で闘い続けるアジカンの、切実な想いそのもののように、その歌と音が熱く胸に残った。

■7月15日

  • 01.夜のコール
  • 02.All right part2
  • 03.迷子犬と雨のビート
  • 04.君の街まで
  • 05.ループ&ループ
  • 06.リライト
  • 07.それでは、また明日
  • 08.N2
  • 09.夜を越えて
  • 10.エントランス
  • 11.センスレス
  • 12.アンダースタンド
  • 13.君という花
  • 14.マーチングバンド

  • EC1.踵で愛を打ち鳴らせ
  • EC2.ワールド ワールド ワールド
  • EC3.新しい世界

■7月16日

  • 01.サイレン
  • 02.マジックディスク
  • 03.ソラニン
  • 04.君の街まで
  • 05.ループ&ループ
  • 06.リライト
  • 07.それでは、また明日
  • 08.N2
  • 09.夜を越えて
  • 10.エントランス
  • 11.惑星
  • 12.アンダースタンド
  • 13.君という花
  • 14.マーチングバンド

  • EC1.All right part2
  • EC2.踵で愛を打ち鳴らせ
  • EC3.転がる岩、君に朝が降る
文/高橋智樹 | 写真/TEPPEI、古溪一道