そして、そのモードはゴッチの、各アーティストへのコメントにも表れていた。「アナログフィッシュ、よかったなあ。“Sayonara 90’s”、歌詞いいよね。あと9mmね。『今日は花火大会らしいですね。お前らも何かを打ち上げにきたんだろ?』ってね。みなさん地元に帰って、飲み会の時とかに使ってください(笑)。 ストレイテナーはね、懐かしい曲をやってくれたのがよかったね。Stereophonicsはもうね、本物の本マグロ食べたみたいな感じでね……たとえが悪かったら謝りますよ(笑)」……などなど。 そんな開放的な空気に触発されたオーディエンスは曲中ずっとジャンプしっ放し、横浜アリーナの地面が面白いように揺れている。 それにしても、今のアジカンのプレイは逞しい。たとえば“Re:Re:”でカメラ目線かましながらタフなドラミングを披露し、何よりこの空気を楽しんでいるキヨシ。たとえば「喜多さん、ギター・プレイヤーとしての根性を見せてくださいよ!」とゴッチに煽られた喜多が“トラベログ”で聴かせたハードなギター・リフ。たとえば“惑星”の間奏で聴かせた山田のゴリッゴリのベース・プレイ。そして、たとえば“ムスタング”で、真っ向から受け止めた1万人のオーディエンスの思いをとびっきりの歌の形にして返していくゴッチ……どこまでも身を委ねていけるロック・ミュージックがここにある。それが何より嬉しい。コンピ盤に収録されていた新曲“夏蝉”の疾走感や、間奏の喜多ギターのジェット・サウンドも最高だ。 歓声と熱気が充満するアリーナを見つめて、再びゴッチ。「あー、ありがとうございますしか出てこないね。もうずっとやってますけど、洋楽のバンドも呼んでやってますけど……めんどくさいでしょ? ジャンルとか分けてる人とか。フジロック行く人だって、半分くらいの人は出てるアーティストの曲をほとんど知らないと思うんだよね。でも、何を求めてるかっていったら、同じように音楽が好きな人と、ジャンル関係なく出会えるからなんだよね。そういうフェスにしたいと思ってるんでね」。ひときわ大きな拍手! 喉の調子を気遣いつつ、「明日声でるかな? でも、振り絞ってやるんで」と1日目のアクトを最後までフルスロットルで駆け抜けていたゴッチも、結局2日目の最後まで完走しきっていた。 2日目も、各アーティストへのコメントを忘れないゴッチ。「8ottoカッコよかったよね。ART-SCHOOLは昔、下北沢のライヴハウスで一緒にやってたりしたんですけど、好きな曲いっぱいやってくれてよかったです。hellogoodbyeは……ルックスが親近感わくよね(笑)。あとSPECIAL OTHERS。彼ら原付で来てるからね。昨日はトクマルくん電車で帰ったし(笑)。ASH素晴らしいね。喜多さん新曲『ICHIBAN』Tシャツ着てるからね。あとSPACE COWBOY。俺の歌詞が細切れになったやつね。俺よく歌詞間違えるから、それを指摘されてんのかなと思って」……そして、続けてELLEGARDENに向けて、盟友としてのメッセージ。「あとELLEGARDENね……みんな思うところも言いたいこともいろいろあると思うけど、また会えると思うし、NANO-MUGENにも出てほしいと思うし」。さらに、照れ隠しのようにTHIRD EYE BLINDに関しての「ホリエくんがメールでTHIRD EYE BLINDって打つのがめんどくさいからって『天津飯』って送ってくるんだよ。失礼な話だよな?」というコメントで笑いを誘う。 2日目の最後、今年の『NANO-MUGEN』を総括して語ったゴッチの言葉が印象的だった。「後ろで観ていてね、始めた頃のことを思い出したりして……いいフェスになったなと思って。単純に、音楽が好きな人が増えたら、もっといろんなことがよくなっていくと思うんだよね。反戦歌を歌ったって戦争はなくならないし、インターネットに書き込んだって気分は晴れないけど、だからそれは無駄だ、暗い世の中だっていうふうに思わされてるところがある気がするんだよね。そういう状況に、僕らは音楽で対抗していきたいと思ってます。みんなも落ち込んだりした時は、自分の好きな音楽を聴いてください。音楽を好きなことを忘れないでください。そうすれば、秋葉原にトラックで突っ込む必要もなくなるし。どれだけできるかはわからないけど、心がぎゅっとなったところがふわっとなるような音楽を作り続けていきたいと思います」 2日目のアンコールでは、なんとTHIRD EYE BLINDのメンバーがステージに! アジカンとの奇跡の共演で、blurの“Song 2”! 「フウッフー!」を力いっぱい歌い上げるゴッチ&スティーヴンに、横浜アリーナのオーディエンスも力いっぱいのジャンプで応える。 スティーヴンのハットをかぶされたゴッチ、「これ、イケてんの? このまま今年の『NANO-MUGEN』終わって大丈夫なの? いくつか取材入ってんだけど、このままででいいの?」と喜多に問いかけると、アリーナ一面大爆笑。 2日間とも、アンコールを“新しい世界”で締め括ったアジカン。ここがロックの現在地で、ここからロックの新世界が広がっている……そんなことを、漠然とではなく、リアルな言葉と歌で描き出してみせる、感動的なアクトだった。 |