7月17日も横浜は抜けるような快晴！　11:30、山ちゃん＆キヨシのコンビによる前説スタート！　「あ、着いた？　え、席がいっぱいで座れない？　俺いまステージだから、みんなに言っとくわ！」と、ケータイでしゃべってる風の山ちゃんの語り（寸劇？）で「座席の椅子取り禁止」というルールを再確認。「BOOM BOOM SATELLITES！　ほんと楽しみです。まさか朝イチとは誰も思わなかったでしょうけど(笑)。そしてモーモールルギャバン。大爆笑です！」というキヨシの解説の後、会場一丸となって5、4、3、2、1……のカウントダウン。2日目、開幕！

トップバッター＝BOOM BOOM SATELLITES、いきなり大地を揺るがす“DIG THE NEW BREED”の超硬質重低音！　横浜アリーナはあっという間にハイパー＆ハイブリッドなロック異次元へと叩き込まれる。ある意味『NANO-MUGEN』というコンセプトを日本で最もダイレクトに体現しているこのバンドの出演は、「WEEZER／マニックス揃い踏み」という洋楽サイドのトピックと並ぶ今回の重要なポイントでもある。“BACK ON MY FEET”“MOMENT I COUNT”“KICK IT OUT”と曲を畳み掛けたところでようやく「はじめましてBOOM BOOM SATELLITESです！」と挨拶する川島の声に、大きな拍手が沸き起こる。最後は“STAY”で壮大な音の風景を描き出し、終了！　あまりに荘厳で美しすぎる、『NANO-MUGEN』2日目の幕開けだった。

サウンドチェックの段階からフロアを沸かせまくっていたのが、次のモーモールルギャバン！　パンイチ＆ネクタイ姿でドラムセットに立ち上がるゲイリーが「君のスカートを、めくりたい！　エブリバディ、セイ！」とテンションMAXで挑みかかって“Hello!! Mr.Coke-High”に突入した瞬間から、会場は熱狂と動揺と驚愕と爆笑と下ネタが渦巻くモーモー・ワールド！　ゲイリー・ビッチェ／ユコ・カティ／T-マルガリータの3人のシュアなテクニックでもって、どこまでもスリリングなバンド・アンサンブルとグルーヴを編み上げて爽快にかっ飛ばす彼ら。最後、“サイケな恋人”ではもはやモーモー名物となった「パンティー！」の会場一丸コール＆レスポンス！ 3人の情熱だだ漏れの熱演が、神々しいほどに濃い狂騒空間を生んだ30分だった。

アコースティック・ステージには星野源が登場。“歌を歌うときは”の《想い伝えるには　真面目にやるのよ》と切々と歌い上げる豊潤な歌声が、さっきまでのモーモールルギャバンの狂騒に満ちた横浜アリーナの空間に一陣の凛とした風を吹かせていく。“ばらばら”の《世界はひとつじゃない》など、砂の中のダイヤモンドのように世の中に点在する「本当に大切なこと」の在り処を、アコースティック・ギターの調べと珠玉のメロディに乗せて1つ1つ静かに、しかし確実に指し示していくような彼の歌が、1つ1つ心に沁みてくる。「今回、実は弾き語りは僕だけっていう。逆にロックなんじゃないか？って(笑)」と笑いを誘いながら、最後の“くだらないの中に”まで全7曲、その歌で広大なアリーナをすっかり魅了していた。

ここでゴッチ＆建ちゃんのMCコンビが登場。「ご飯もいいけど、戻ってこーい！」と飲食エリアのお客さんに呼びかける建ちゃんに「聞こえないよ！　みんなで言った方がいいんじゃないの？(笑)」とゴッチ。会場一丸となっての「始まるよー！」「戻ってこーい！」コール(笑)。建ちゃん「昨日、今の時間ぐらいに着いたんですよ」　ゴッチ「その上、昨夜は酔っ払い上げましてですね。自力歩行が困難だったんで、家の前に放置しました(笑)」という「昨日のあらすじ」的MCの後、「次はWE ARE SCIENTISTS。みなさん、海外のバンドを見る時、固まっちゃうんで(笑)。声出していきましょう！」と話すゴッチと一丸となっての「発声練習」コール＆レスポンスもバッチリ。

続いて、今回の『NANO-MUGEN』では2回目のステージとなるWE ARE SCIENTISTS！　昨日からがらりと一新したセットリストでこの日のアクトに臨んだ彼ら。キース＆クリストファーのツイン・ヴォーカルとソリッドな3ピースのサウンドが、時に鮮やかに絡み合うように、時にデッドヒートを繰り広げるように、クール＆ダイナミックな高揚感の風景を描き出していく。ダルなビートを引きずりながら、そこからストロークスのような鋭角のロックンロールへと駆け上がっていく“Can't Lose”も、“Pittsburgh”の雄大なロックから急転直下“Dinosaurs”の快速2ビートへ雪崩れ込む展開も最高。最後はキースの「グレート・フレンド、マット・シャープ！」と呼び込んだマットと一緒に“After Hours”！　曲のエンディングでギターを下ろしかけるキースを、マットがここぞとばかりに抱え上げてぶん回して終了！

やがてDJステージ前の緞帳が開き、轟々と響くサイレン！　フロア狭しと飛び交うバルーン！　今日も「マッシュポップ＆パンクステップ」で狂騒を構築するDJ集団＝THE YOUNG PUNX!のお出ましだ。“MASHitUP”も“Skateboard chase”も、果てはオアシスの反則ものの大ネタをぶち上げる“Wonderwall VS Warhead”まで、昨日同様の鉄板のセットリストで、持ち時間30分間をぎっちぎちのビートとギターと電子音と歓喜で埋め尽くしてみせる。イタリアからのパンクステップの刺客＝PHONATともに爆裂重轟音を響かせていく“Ghetto Burnin”も、女性シンガー＝KOKOとの3MC編成でジャンプ！　ジャンプ！の嵐を生んだ“Ready For Fight”も、『NANO-MUGEN FES. 2011』の決定的瞬間の1つとなっていく。「ヨコハマー！」のハルのコールとともに、最後は5人で一礼！

そして……The Hobo King Bandが叩き出すタイトなビートの中、ロック・レジェンド＝佐野元春が颯爽と登場！　“ナポレオンフィッシュと泳ぐ日”でっかいコーラスとクラップを巻き起こし、“99ブルース”のド迫力のサウンドとグルーヴでアリーナを震撼させる！　“ヤング・フォーエバー”以外はすべて80年代の楽曲で固めた内容は、彼なりの後輩アーティストへのリスペクトだろう。「素晴らしい友人を紹介します！　ASIAN KUNG-FU GENERATION、ゴッチ！」。固い握手を交わした佐野とゴッチが歌うのは“約束の橋”！　さらに「20代の頃に書いた歌を歌います」という佐野の紹介から流れ出したのは“SOMEDAY”！　ラストはなんとデビュー曲“アンジェリーナ”！　最高のロックンロールが、「愛する気持ちさえ分け合えればI love you！」「You love me！」の熱いコール・レスポンスが、2日目も後半に差し掛かった『NANO-MUGEN』の空間を眩しく彩っていた。

ここで昨日と同じく40分間の休憩。4Fゲストリアムでは、さっきアリーナをアゲ倒したばかりのTHE YOUNG PUNX!のDJアクトが！　さらにストレイテナー後の17:25からは、昨日登場してくれた磯部正文が、再びキヨシとともにアコースティック・ライブを展開、鉄壁のタイムテーブルにさらなる祝祭の彩りを加えていく。一方、メイン・ステージには……。

前回は1日目のヘッドライナーを務めた盟友・ストレイテナー！　1曲目から“VANISH”のパワフルなビートが、ホリエ＆大山の切れ味鋭いギター・サウンドが、オーディエンスの魂に一斉点火……したところに、“KILLER TUNE［Natural Born Killer Tune Mix］”で会場激震！　そんなパワフルな演奏とは一転、ホリエ「もう『NANO-MUGEN FES.』は俺たちのホームなので。去年は呼ばれなかったけど」　シンペイ「でも、俺たちの知らないところでやってたらどうしよう？と思った(笑)」といったMCでフロアを沸かせてみせる余裕も、『NANO-MUGEN』の歴史をともに作ってきたロックの雄ならではだ。「ゴッチが好きな曲を」と披露した“CLARITY”、“羊の群れは丘を登る”の精緻で獰猛なアンサンブル、最後の“Melodic Storm”での会場一丸エモーション大爆発……すべてが圧倒的なアクトだった。

昨日に引き続きTHE RENTALSのステージ……の前に、アジカンのゴッチ＆建ちゃんの前説コンビが登場。建ちゃん「今回はアコースティック・ステージとは言いつつも、バンド・セットなんですよね」　ゴッチ「マットとメールやりとりしてるうちにそうなって(笑)。今回はASHのティムとマークとアラン、そしてWE ARE SCIENTISTSのキースも出てますからね」。再びフードエリアに向けて会場一丸の「戻ってこいよー！」コールをかました後、これも『NANO-MUGEN』お馴染みのゴッチの四股踏みに「よいしょー！」大合唱！　2日目も終盤、さらなるクライマックスへ向けての準備は万端！

“October Thirteen”のSEをバックにオン・ステージしたTHE RENTALS。「You can always see the sun, day and night！」というマット・シャープのメッセージから、“The Love I'm Searching For”“Hello, Hello”へ。ポップとロックを七色に輝かせていく、マットのあふれんばかりのバイタリティ！　ゴッチを呼び込んでアリーナに熱いクラップの風を吹かせた“A Rose Is A Rose”！　ASHの“Jack Names The Planet”でティムにヴォーカルを譲ってベースをぶりぶり弾き倒すマット！　“Friend Of P”の途中、「It’s TIM's Birthday！」というマットのコールをきっかけにケーキを運んでくるゴッチ。♪Happy birthday, dear WHEELER〜のシンガロングから、アジカンの3人も加わった日米英ロック合体編成の“Getting By”へ。最後、DJ BOBOの“Happy Birthday To You”でもうひと盛り上がり！

ここで建ちゃん＆山ちゃんがMC。「さっき誕生日って散々盛り上がったけど、あれはアメリカン・ジョークで、実際はティムの誕生日でも何でもないっていうね」とバラす建ちゃんに、会場全体から「えーっ！(笑)」の声が。しかし、「前回は空港まで来てたんですけど、体調不良で出演がキャンセルになってしまって……でも今回は大丈夫です！　さっき見かけました！」と、マニックスの登場をアナウンスすると、アリーナの空気が一転。「建さん、目がウルウルしてますよ！」と山ちゃんが言うのも無理はない。アジカンの、『NANO-MUGEN』の2年越しの宿願が、すぐそこに……。

18:55、いよいよMANIC STREET PREACHERSがステージに！　サポートのギター＆キーボードを伴った5人編成で横浜アリーナの舞台に立ったジェームス、ニッキー、ショーン。ジェームスの「ハロー、ハロー！　ゲンキデスカ！」という挨拶に感慨を抱く間もなく、いきなり“You Love Us”の爆音で「ユー・ラブ・アス！」の大合唱を巻き起こす。UKロックの美とスケールを100％体現するような“Your Love Alone”のサウンドの透明感！　“（It's Not War）Just The End Of Love”で強烈なクラップの嵐を巻き起こしていく、ダイナミックなサウンドとメロディのパワー！　立て続けに“Everything Must Go”、さらに「リッチーに捧げるよ」というニッキーの言葉に導かれて雪崩れ込んだのは、名曲“Motorcycle Emptiness”！　UKロックの歴史を作ってきたメロディの1つ1つが、『NANO-MUGEN』の場で解き放たれていく。すべての曲が堂々とした風格にあふれていて、熱く、美しい。ロックンロール・エクスプレス大暴走のような“Faster”“Slash 'n' Burn”はこの上なくスリリングだったし、“If You Tolerate This Your Children Will Be Next”の辛辣なメッセージは今この日本の現状への警鐘のように胸に深く響いた。「ウィ・ラブ・ユー・ヨコハマ、ワンダフル！　サンキュー・ベリーマッチ！」とジェームス。最後はひときわ眩しいヴォーカリゼーションでアリーナを包み込んだ“A Design For Life”！　最高のロック・バンドの、最高のステージが、『NANO-MUGEN』2日目の夜を祝福していた。そして……。

ついにヘッドライナー＝ASIAN KUNG-FU GENERATIONのアクト！　電子音SEの静謐な空気を切り裂くように、ひときわでっかく鳴り響く“リライト”！　残りわずかな『NANO-MUGEN』の時間を謳歌するように、オーディエンスも力いっぱいの歓声とクラップで歌とサウンドに応える。さらに“Re:Re:”のタイトなビートがアリーナ一丸の大ジャンプを巻き起こし、“マジックディスク”のダイナミックなアンサンブルがフロアの熱気を1つの巨大なエネルギーへと編み上げる。「いろんな積み重ねを経て、今年もこのフェスができたんですけど……とても嬉しいです」と、さらに“All right part2”“アフターダーク”“ブルートレイン”“N.G.S”を畳み掛ける！
「僕ね、『THE FUTURE TIMES』っていう新聞作りました！　ミュージシャンが何やってるんだっていう意見もあるかもしれないけど……この新聞でやりたいことは、無関心を焼き尽くすってことですね」というゴッチのMCに沸き上がる熱い歓声を、“フラッシュバック”“未来の破片”といった『君繋ファイブエム』の楽曲群のエネルギーに変え、そこから“ソラニン”へつないで鮮烈な感激を生んでいく。「一時は『NANO-MUGEN FES.』できるかどうかわかんなくて。3月は『音楽をやること自体が不謹慎』みたいな……電気うんぬんじゃなくて折れちゃった心があって。でも4ヵ月経って、いろいろ考えて、いちばん大事なのは『自分はどうしたいか』であって。『偽善だ』とかいうノイズなんてどうでもいいんじゃん？って。それはすべてのことに通じるんじゃないの？って。だから、このフェスは絶対成功させる！　7月中旬で俺、完全復活！っていう気持ちでやってました」という赤裸々なゴッチの言葉に、さらにエモーショナルな喝采が広がる。THE RENTALSのマット＆ローレンが乱入した“君という花”の異次元の高揚感！……の後、“転がる岩、君に朝が降る”で真摯に本編を締め括った。ほどなく再登場して「また来年もやりたいんで、ぜひ遊びにきてください！」と語るゴッチの言葉に、うおおおおお！と大歓声！　アンコールの“ループ＆ループ”、そして正真正銘のラスト・ナンバー“新世紀のラブソング”を高らかに響かせ……21:51、『NANO-MUGEN FES. 2011』のすべてが終了！　ありがとうアジカン。ありがとうみなさん。またこの場所で会いましょう！