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2011.07.16 (SAT) 即日レポート!!

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7月16日、『NANO-MUGEN FES.』会場=横浜アリーナ。それこそ全身が焦げるくらいの快晴の中、横浜アリーナを取り囲むように列を作るキッズの表情は、2年ぶりの開催を待ちきれない!という期待と高揚感ではちきれそうな勢い。ゲートを入ったところに並ぶグッズの数々が、そしてメイン・ステージ/アコースティック・ステージ/DJステージを股にかけてトータル・コーディネートされた巨大なオブジェが、2年ぶり『NANO-MUGEN』がいよいよ!という実感をびしびしと伝えてくる。

MC

開演に先立って前説MC=山ちゃん&キヨシが登場。キヨシ「今年はメンツが豪華で豪華で」と言えば、山ちゃんが「♪『NANO-MUGEN』、あるあーるー……」と突如歌い始め、「椅子とり厳禁」「体力ペース配分注意」という「注意事項あるある」へ突入。山田「今日のトップバッターはねごとです!」 キヨシ「さっき楽屋行ったんだけどさ、山田がじろじろ見てて、メイク中だったのに」 山田「ドン引きだったよね?(笑)」という他愛のない会話にも、空気がじわじわ熱を帯びていくのがわかる。『NANO-MUGEN』ヒストリー映像、そして出演者紹介映像が場内のヴィジョンに流れ……。

ねごと

11:30、一番手=ねごとの登場! “インストゥルメンタル”の静かなピアノの旋律と歌から一気に流れ込んだアンサンブルの力強さ。清冽さとタフさを兼ね備えた“透き通る衝動”のロック・サウンド!「1日目、一番手を務めさせていただきますねごとです。今日はみんなで、いい夢を見ましょう!」という蒼山幸子の挨拶や「一昨年、お客さんとして来てまして。『いつか出れたらいいなあ』って言ってたら、2年後ここに立ってました!」という言葉に、熱い拍手が沸き起こる。発売間もないシングル曲“メルシールー”に続いては、彼女たちの出世作的ナンバー“カロン”。宇宙の果てにも、オーディエンスすべての心にもダイレクトに手を伸ばすような、アグレッシブな意欲と才気がひときわ大きな輝きを放った瞬間だった。

オオルタイチ

ねごとの退場後間もなく、舞台上手の巨大なオブジェが移動し、そこに出現したDJステージ。そして、「みなさんこんにちは!」という言葉よりも早く、アリーナ全体をびりびり震わせる轟音トラック! その主は、大阪発・異色の即興的狂騒DJアーティスト=オオルタイチ。祭囃子のようなビートに乗せ、ハンドマイクでぴょんぴょん飛び跳ねながら歌い上げる“Beshaby”の狂騒感!ハード・テクノのようなスクエアなビートとともに、狂気の海の底から響くような歌を聴かせたり、絶叫とともにジャンプしながらフロアを煽る“Futurelina”の威力! 「僕の音楽は、あんまりノリ方がわかんなくても、しびれてるだけでオッケーなんで」という言葉通り、独特のウィットと爆音で聴き手の理性のタガをぐいぐい外していく様は圧巻!

MC

ここで「こんにちは!」と登場したのは、ゴッチ&キヨシのコンビ。「今日の一発目のビッグ・ニュースとしましては、メンバーまだ1名会場に現れてないと(笑)。ASHのギタリストの人なんですけど……」という衝撃(笑撃?)の発表。ゴッチ「本当は喜多先生が、フェスの楽しみ方を伝授する予定だったんですけど。代わりにキヨシさんが!」 キヨシ「完全なる無茶振りですね(笑)。でも、楽しい時は、とりあえず声を出す!」と会場一丸となっての発声練習。「『THE FUTURE TIMES』っていう新聞を創刊しました!」というゴッチの告知にも拍手喝采。まだ開演から1時間ながら、フェスの熱気はバッチリだ。

WE ARE SCIENTISTS

続いては再びメイン・ステージ、洋楽アクトのトップバッターを担うのはWE ARE SCIENTISTS! どしゃめしゃポスト・パンク的なデビュー当初のサウンドから、ひたすらソリッドかつダイナミックにビートと疾走感の「その先」へと疾駆していくような力強さと安定感を持った3ピースへと進化した彼ら。“Nice Guys”“I Don't Bite”といった最新作『Barbara』の曲のみならず、デビュー・アルバムの必殺曲“Nobody Move, Nobody Get Hurt”も披露。「ASIAN KUNG-FU GENERATIONありがとう。次の歌は彼らに!」と“The Great Escape”、そして最後はなんとTHE RENTALSのマット・シャープを招いて“After Hours”をハモりまくって大団円! これもまた『NANO-MUGEN』ならではのマジカルな瞬間だ。

磯部正文BAND

そして磯部正文BAND! 美濃隆章(G/toe)、シモリョー(Key/the chef cooks me)、戸川琢磨(B/COMEBACK MY DAUGHTERS)、恒岡章(Dr/Hi-STANDARD)という精鋭軍団を率いるいっそん、“Sound in the glow”で横浜アリーナをポジティブなヴァイブで満タンにしていく。美濃の機材トラブルも「じゃあ、アリーナの曲やります!」と♪そんなのアリーナ、横浜アリーナ〜と即興曲で熱気に変えてしまうのも人徳の為せる技。中盤からは“THE SUN AND THE MOON”からHUSKING BEEナンバー5連射! 「トリビュートでアジカンにやってもらった曲を」と披露した“欠けボタンの浜”も、「アリーナに風を!」と熱く歌い上げた“新利の風”も、真摯に、誠実に、感情の頂点を目指すいっそんの姿勢そのものだった。

THE YOUNG PUNX!&PHONAT

会場に巨大なバルーンが飛び交う中、今回もやってきましたルール無用・超高気圧型ダンスDJ集団=THE YOUNG PUNX!。必殺DJアンセム“MASHitUP”でハルが超絶ライト・ハンド・ソロをキメれば、ゲスト女性シンガー=KOKOが“Juice & Gin”の切れ味鋭いラップと熱唱がアリーナを震撼させ、さらに「バック・トゥ・1985!」のコールから『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の“Skateboard Chase”の大ネタが飛び出し……と、やること全部が衝撃のようなアクト。「イタリアでいちばん背が高いと思うよ!」とハルが紹介したイタリア人DJ/アーティスト=PHONATとともに鳴らした“Ghetto Burning”の、DJ重戦車とでも言うべき音の壁! オアシスの名曲を使った“Wonderwall VS Warhead”は万人必笑のインパクト!

MC

「ここでひとつお知らせが」と、再び山ちゃん&キヨシのコンビによるMCコーナーでは「ナノアプリ(NANO app)って知ってます?」を紹介(7/16・17の出演アーティストのタイムテーブルや演奏後のセットリスト、グッズ情報に入場規制ブロックの情報など、『NANO-MUGEN』をリアルタイムで発信していく、iPhone&ケータイ用のアプリ。ぜひご活用を)。そして、キヨシの「喜多建介が……間に合いませんでした!」という声に「えーっ!」と驚愕する会場。キヨシ「嘘です!(笑)」 山田「嘘はダメですよ! 喜多建介……私のいちばん好きなミュージシャンですから!(笑)」。そんなやりとりの後で登場するのはもちろん……。

ASH with KENSUKE KITA

『NANO-MUGEN』には欠かせない存在となったUKの雄=ASH。今回のトピックは何と言っても「ギタリスト=喜多建介」! “Kamakura”からいきなり弾丸のように飛翔するアンサンブル!……の中でも、建ちゃんのレスポールはティムのSGとギアを合わせてパワフルなサウンドを生み出していく。「ケンチャン! イッショニ、デキテ、サイコー!」のティムの声に沸き上がる喝采を受け、さらに“Girl From Mars”“A Life Less Ordinary”“Shining Light”“Kung Fu”と、UKギター・ロックのダイナミズムとポップ感の結晶のような名曲を畳み掛ける。“Orpheus”の疾走感も、“Return Of White Rabbit”のグルーヴ感も、大仏マスク姿のTHE RENTALS一行が乱入して踊りまくった最後の“Burn Baby Burn”も最高!
ASHの後、ステージ全体が40分間の休憩に突入。しかしその間も、2Fタワーレコード・ブースではWE ARE SCIENTISTSのサイン会が行われていたり、4FゲストリアムではTHE YOUNG PUNX!のDJアクトが行われていたり、と盛りだくさん。ゲストリアムでは他にも、THE RENTALS前にキヨシ&磯部正文のアコースティック・セットが展開されるなど、何が飛び出すかわからない音楽玉手箱的空間として存在感を放っている。そして、アリーナの各ブロックで入場規制が続出し、ただならぬ熱気の中……。

the HIATUS

ステージにはthe HIATUSが登場! 1曲目“Snowflake”で真夏日の横浜アリーナを凍てつかせるような冷徹な音の粒子を放射しながら、超満員のアリーナを心の芯から熱く奮い立たせていく。“The Flare”以外を、最新マキシ『Hatching Mayflies』の3曲と2ndアルバム『ANOMALY』の楽曲で構成した最新型フォーマットのthe HIATUSが、銀河丸ごと呑み込むようなスケール感と、人間の奥底のさらに奥へと斬り込んでいく鋭利さを獲得していることが窺える、意欲的なアクト。そんなシリアスで熾烈な音を鳴らしながら、「ああー、楽しい!」「楽しい土曜日になるといいね!」とこの上なく快活にフロアに呼びかけ、さらに会場の温度を上げていく細美。カオティックな“The Ivy”の轟音から“The Brainwasher”“Insomnia”と連打して描き出したクライマックスの風景は圧巻!

THE RENTALS with ASH/GOTCH

続いてオン・ステージしたのはマット・シャープ率いるTHE RENTALS……と、ASHのティム! 美麗コーラス・ヴォイスとヴァイオリンの音色が舞い踊る“The Love I'm Searching For”、さらに“Hello, Hello”でゆっくりじっくり温度を上げるサウンド……とは関係なく、出番前からすでにフルスロットル状態のマットは拳を振るったりジャンプしたりしてフロアを力いっぱいアゲまくり、“Waiting”“Barcelona”でひときわでっかい歓喜の上昇気流を生み出していく。「マサフミ・ゴトー!」とゴッチを呼び込んで“A Rose Is A Rose”をやって熱いハグを交わしたり、“Please Let That Be You”でティムと肩を組んでみせたり……と、国境を越えたフレンドシップそのもののようなステージ。最後はゴッチ/建ちゃん/山ちゃんの3人が加わった大編成で、弾むような“Getting”のビートを響かせて大団円! 

ASIAN KUNG-FU GENERATION

そして……オーガナイザー=ASIAN KUNG-FU GENERATION、1日目はトリ前に登場! “新世紀のラブソング”でフロアをでっかく揺らし、“マジックディスク”で巻き起こる熱気を“All right part2”でひときわカラフルに花開かせて、さらに“Re:Re:”“アンダースタンド”“遥か彼方”……横浜アリーナ熱狂空間が生まれていったことは言うまでもない。
「最初ASHから始まって、だんだんいろんなバンドが出てくれるようになって。さあWEEZER!って時に、震災があって……ここがどれだけいいフェスになっても、東北の復興には何の役にも立たないかもしれないけど、もう1回、自分がギターを持って音楽をやることで、自分の想いを遠くに送れるんじゃないかと思って、この2日間やってます。みんなも、心を蘇らすというか……『生き返って』帰ってください!」。そんな真摯な言葉とともに鳴らした“迷子犬と雨のビート”“君の街まで”が、深く、強く胸に響いた。「この後WEEZERだね。そんなこと自分のステージで言うなって感じだけど」と笑うゴッチの顔は実に満足そうだ。“ループ&ループ”“リライト”“君という花”で歓喜のメーター振り切った後、ラストは“ソラニン”の清冽な響きで終了。心からのメッセージに満ちた、堂々のステージだった。

WEEZER

1日目最後のアクト、いよいよWEEZERが『NANO-MUGEN』のステージに! いきなり最新作『Hurley』から“Memories”のアグレッシヴなサウンドを叩きつけたかと思うと、「日本の映画、大好きです! 『スウィングガールズ』とか『ウォーターボーイズ』とか、ジブリ!」と日本語で言いながら、“Undone - The Sweater Song”のゆるやかなイントロに合わせて♪トトロ、トトロ〜とか♪ポーニョポーニョポニョとか歌いまくるリヴァース。トリプル・ギターの爆音とともにエモーションの限りを尽くして絶唱される“My Name Is Jonas”も“Pink Triangle”も“Don't Let Go”も、それらすべてが『NANO-MUGEN』の1ページになっていく……という誇らしい実感がオーディエンスの中に沁み渡っていくのがわかる。星の数ほどいるロック・バンドの中で、それでも文系青年の衝動逆噴射たるウィーザーという音楽に最も切実にロックを感じずにいられない人は少なくないし、ゴッチはじめアジカンの面々もそんなロック少年だったに違いない。“Hash Pipe”や“Island In The Sun”“Pork And Beans”などのイントロが鳴り響くたびに、ハッとするような感激の声が会場に満ちあふれる。
終盤、“I Want You To”でハンドマイクでステージから飛び降り、警備スタッフの肩を組んで悠然と歌い歩き、ついにはアリーナ後方のPAスペースまで到達……しただけでは飽き足らず、通路を全力疾走し、2階席に突入し……とやりたい放題のリヴァース。他のメンバーをステージに残し、2階席に立ったまま本編最後に歌うのは”Only In Dreams”! アンコールのRADIOHEAD“Paranoid Android”カバー、そして“Buddy Holly”でフィナーレ! 「ありがとうジャパン! 頑張ってジャパン!」というリヴァースのシャウトと、5人全員ドラマー状態(!)の狂騒と、最高の祝祭感を残して、21:47、1日目は終了! そしていざ2日目へ!
文/高橋智樹